パッション(映画原題:The Passion of the Christ)




パッション

The Passion of the Christ

「パッション」、04年全米一般公開
キリスト最期の12時間にグラフィックな写実化を試みたメル・ギブソンの問題作、「パッション」、The Passion of the Christ(キリストの受難)が米時2月25日、聖灰水曜日(Ash Wednesday)の全米一般公開初日で2360万ドルもの大好調な興行成績を出した。 感銘の涙に浸る鑑賞者も出れば、ギブソンの反ユダヤ的宗教観や、グロテスクで斬新な受難描写に徹底した演出の趣旨も問われるRレイティングの宗教映画。

敬神の念厚きメル・ギブソンのマーケティングと商才で、TV宣伝ほか、数件のカトリック教会でプレミア公開も施行された「パッション」は、教会の予約チケット(300万ドル)も含めた初日公開前、全米3000館(4643のスクリーン)でチケットの7割がブッキングされていた話題作。2500万ドルの自費で手掛けたギブソンの意欲作(総制作費3000万ドル)としては順調な滑り出しで、トップの「スパイダーマン」(3940万ドル)に続く、歴代初日収益の5位に座した。このフィーバー、どこまで続くやら。

イエス・キリスト役に、実生活の信心ではメル・ギブソンに劣らぬジェイムス・カヴィーゼル(36)、イタリアのロケ中、稲妻に撃たれるという不思議体験も得た米ワシントン州出身の男優。主な共演者にルーマニアのユダヤ系女優、マイア・ボーゲンスターン(42)のマリア役ほか、マグダラのマリア(マグダレン)にイタリア美女のモニカ・ベルッチ(40)。

フォローアップ
公開12日で2億1200万ドルの全米興行成績を収めた「パッション」は、3億ドル突破の収益が今後も予想される大ヒット。 大手スタジオに反ユダヤ主義の色合いが濃い問題作として無視された映画にとっては、約2500万ドルの宣伝費で効果を出したボックス・オフィスの勝利。映画館に縁遠い老齢者(キリスト教信徒)のチケットも大いに左右する興行成績。

2年後のフォローアップ
ロサンジェルス郡保安局の報告によると、泥酔運転の疑惑で06年7月28日に逮捕されたギブソンが、連行される途中の車内で、「世界の全戦争はユダヤ人のせいだ!!」 と絶叫し、執行官代理に 「あんた、ユダヤ人??」 と問うた。到着後も女性官に対して性的ハラスメントの暴言を吐いたりなど、醜態を見せた男優は恥辱の翌日、ビッグ・スキャンダルに覆われて、全米へ陳謝。遂に本音が漏れたかメル・ギブソン、ユダヤ人共同体へも謝罪後、飲酒依存症でリハビリ・センター行き!



配給社決定の「パッション」
ユダヤ人に対する個人的主観が極度に暗示された映画コンテンツを理由に、大手配給社が避けたアイコン制作映画「パッション」へ、2003年10月に独立系の Newmarket Films(ニューマーケット映画)が配給を踏み切った。2004年の四句節(復活祭前の40日間で2月)、米公開予定。

過去にキリストを扱って論議が醸し出され、配給社が辛酸をなめた映画例では、マーティン・スコーセーズィ監督の「最後の誘惑」(原題:The Last Temptation of Christ)が知られる。

ニコス・カザンザキス原作の新解釈で、神と人間の2面性でキリスト(ウィレム・デフォー主演)の苦悩を主体描写した同衝撃作に対し、神への冒涜で大反響を示した宗教関連団体が1988年、一般公開に先駆けてユニバーサル・スタジオ前で公開禁止デモ(2万5千人以上)に迫った。スタジオ会長ほか、監督やスタジオ常務連に対する殺害脅迫や抗議文も悪化し、公開後もそれぞれの警備が数年間強いられたばかりか、本命の興行成績は不振の終末を迎えたハリウッドの名作である。この事実を大手のスタジオ代表が米ニューズウィーク誌に伝え、メル・ギブソンの「キリストの受難」を受け入れない背景の一因も語る昨今だ。



「パッション」制作に精進のメル・ギブソン
米対イラクで反戦抗議もピークに達するハリウッド界のスター陣を横目に、せっせとキリストの生涯に集中するのは、ベテラン男優のメル・ギブソン(Mel Gibson)。ユダヤ教指導者がそのギブソンに対し、キリストの受難をテーマにした「パッション」(原題:The Passion of the Christ)で、キリストの十字架磔の責任者をユダヤ民と見なす描写を避けるよう懇請。

NYタイムズに掲載予定の記事を入手した米サイモン・ワイゼンソール・センターの創立院長、マーヴィン・エア氏が、第二バチカン公会議(62ー65、教皇ヨハネ23世立案によるカトリック教会の役割における刷新と近代化で、カトリック教とユダヤ教の和解文書を含む)の決議に同意拒否するウルトラ保守的な伝統派カトリック信徒のギブソンに対し、映画製作の真意を懸念した矢先の要請となった。ラビのエア氏は、過去に映画製作経験も持つ映画芸術科学アカデミー員。

基本的にはギブソンの映画選択権を摘発したエア氏ではない。だが、フリーランス・ライターで記事責任者のクリストファー・ノクソンが、ギブソンの新作を第二バチカン公会議決議の抹消を目的とした裏作の高い映画と暗示した為、400年を経て改正されたユダヤ人のイメージに対し、グローバルな反ユダヤ主義(Anti-Semitism/アンチ・セミティズム)を動因し易い映画として危惧した訳である。

筆者Cinema Aspectが観たTV取材で、「ユダヤ系から反感を買い易い映画か」 と聞かれたメル・ギブソンは、「意図していないが、可能性もあり、いや、真実を語っているだけだ」 と応えている。 真実..とは意味深長なり。

宗教論争がエスカレートしそうな 「パッション」は、アラム語とラテン語のみで展開されるイエス・キリスト最期の12時間に絞った作品。制作完結中のギブソンやその家族の知人達からは、「多分、過去には存在しなかったであろう激烈な映像でキリストの受難が描写された映画」 とコメントされている。キリスト役に挑戦の男優に 「シン・レッド・ライン」 のジェイムス・カヴィーゼル (James Caviezel)。

911惨事直後、「バイオレンスな映画はもう遮断する」 と明言したメル・ギブソン。テロリズムの侵略で混迷に陥った当時、ハリウッド初の制作入りとなったサインで、タイミング好くカトリック教の背景を持つシャマラン監督の次元に参加し、終盤で信仰に復帰する牧師を演じた。後の男優は、多分にプロパガンダ的かつお粗末な出来栄えで終わったプラスティックな映画、「ワンス・アンド・フォーエバー」(原題:We were Soldiers) に主演貢献し、ブッシュ大統領が居座るホワイト・ハウスのスクリーニングへも出席かと思えば、昨今ではキリストの受難にエネルギーと情熱を注ぐハリウッド・スターだ。映画製作を媒介とした言論の自由には予算の見積もりも必須ゆえ、明言に反してか、ギブソンがボックス・オフィスを狙うアクション・シリーズ作、「マッド・マックス」(原題:Mad Max:Fury Road) に出演の噂もあり。

メル・ギブソンの父親
ファミリー・マンで通るメル・ギブソン(56年生)は、加州のマリブ近郊にローマン・カトリック大司教区非加盟のホーリー・ファミリーと命名したカトリック教会まで建造した、信仰心に燃える俳優。「カトリック伝統同盟」 所属の父親ハットン・ギブソンとなれば、"空虚" な意味でバチカン(Vatican)をヴェイカンシィ(vacancy)と皮肉り、自著(珍本)「Is the Pope Catholic?」 や 「The Enemy is Here!」 で、第二バチカン公会議決議を "ユダヤ人支援によるフリーメイソンの共謀" と提唱する人物。

又、NYタイムズ紙の取材では、世界貿易センターはリモート・コントロールで崩壊された米政府のカバーアップで、オサマ・ビン・ラディンは同時テロとは無関係であるとの私見を語り、妻ジョイスと共に 「当時のヨーロッパには600万人ものユダヤ人は存在せず、ホロコーストはでっち上げだ」 と自明。仲の良いこの父親とはある程度意見のずれもあると報じられる息子ギブソンだが、宗教色の濃さではミラー・イメージの親子のようである。



cinema aspect




映画評・新作紹介  ハリウッドニュース  映画賞・映画  映画コメント 




[PR]I^:餅t{i^